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健康コラム

日常生活にプラス10分&ストレッチで生活習慣病予防

運動・エクササイズ
2024年02月01日
動脈硬化net 編集部
動脈硬化net 編集部

動脈硬化を防ぐためには、エネルギーの消費量を増やすことが重要です。エネルギー消費量を増やす方法には、ウォーキングやジョギング、テニスやサッカーなどの運動もありますが、日常生活の動作をプラス10分行うことでエネルギー消費量をアップしたり、すき間時間を使ったストレッチなどで柔軟な身体をつくったりすることも生活習慣病の予防につながります。

仕事や家事でもエネルギーは消費する

運動による生活習慣病の予防効果は、身体活動の強さ×行った時間の合計が多いほど高くなります※1。家事や庭仕事、通勤のための歩行も時間をかけるほど生活習慣病予防効果があるといわれています。毎日仕事や家事、育児に追われて運動の時間の確保が難しい人におすすめなのが、通勤や買い物での移動の“プラス10分”で身体活動量を増やすこと、ながらストレッチなどによる柔軟な身体づくりです。

プラス10分で高血圧予防

生活習慣病になる人が増加している背景には、家事や仕事の自動化や交通手段の発達による身体活動量の低下があるといわれています※2。たとえば、1日の歩行時間が10分以下の人は、20分以上の人に比べて1.4倍高血圧になりやすいなどの報告もあり※3、歩行などによる身体活動量の低下は、将来の健康に大きく影響する可能性があるといえるでしょう。

生活習慣病予防のための運動は、「ややきつい」と感じる程度の有酸素運動が有効ですが※4、5、身体活動量全体を増やすことでも一定の効果が期待できるといわれています※6。いつもよりも10分早く自宅を出る、帰宅後に遠回りするなど、日常生活にプラス10分の歩行で身体活動量を増やしましょう。

ながら運動で柔軟な身体づくりを

自宅でリラックスする時間も身体活動量アップに利用しましょう。ヨガなどの強度が低いとされる運動でも血圧や血糖のコントロール作用が期待できるという報告もあり※7、すき間時間にヨガやストレッチを行うのもおすすめです。 たとえば自宅でソファに座ってテレビを見ているとき、お菓子を食べたり、お酒を飲んだりしていませんか?このような生活をしていては、摂取エネルギーが過剰になって生活習慣病が進行してしまいます。ストレッチは激しい動きではないため、テレビの内容も入ってきますし、心地よく身体を伸ばすことで柔軟性を高めることもできます。

テレビを見ながらストレッチ※8

うつ伏せになって両ひじを床につけ、上体をゆっくり反らします。ゆっくり呼吸をしながら30秒キープしましょう

横向きになって片方のひじを床につけ、脇腹を伸ばしながら上体を30秒ほどキープしましょう

仕事の合間にストレッチ※8

イスを回して腰回りのストレッチ

テーブルを両手でつかんで上体は前を向いた上体のまま腰だけを左右に回しましょう。回った状態で30秒ほどキープします。イスが固定式の場合には、背もたれを持って腰を動かさないように肩を回して30秒ほどキープします

お尻のストレッチ

脚を組み、お尻の筋肉が伸びていることを意識しましょう。

ストレッチを行うときには次の4点に気をつけましょう。

  1. 1つのストレッチは1回30秒
  2. 痛みを感じない程度に姿勢をキープ
  3. 呼吸は止めない
  4. 伸ばしているところを意識して

ストレッチは毎日続けることで筋肉がやわらかくなります。生活習慣病は、高齢になるほどリスクが高くなりますが、高齢になっても身体がやわらかい人ほど血圧が低いという報告もあります※9。また、身体がやわらかいとウォーキングやジョギングなどの運動を行う際のケガのリスクも低下するなどのメリットもあります。


参考資料

※1  Pate RR, et al: Physical activity and public health: a recommendation from the Center for Disease Control and Prevention and the American College of Sports Medicine. JAMA 1995;273:402-407

※ 2 糟谷賢一他:健康診断データを用いた交通行動と健康に関する基礎研究,第 32 回交通工学研究発表会論文集,2012.

※3  Hayashi T, Tsumura K, Suematsu C, Okada K, Fujii S, Endo G. Walking to work and the risk for hypertension in men: the Osaka Health Survey. Ann Intern Med. 1999; 131: 21-6.

※4 Eckel RH, Jakicic JM, Ard JD, et al; American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines.  2013 AHA/ACC Guideline on Lifestyle Management to Reduce Cardiovascular Risk.  J Am Coll Cardiol. 2014;63(25, pt B):2960-2984.

※5  Pescatello LS, MacDonald HV, Ash GI, Lamberti LM, Farquhar WB, Arena R, et al. Assessing the existing professional exercise recommendations for hypertension: a review and recommendations for future research priorities. Mayo Clinic proceedings.(2015) 90:801–12.

※6 前田清司、崔英珠:疾患予防と改善のための身体活動のエビデンス 高血圧.臨床栄養別冊はじめてとりくむ身体活動支援メタボ・フレイル時代の栄養と運動,医歯薬出版:42-49,2019.

※ 7 Hagins M, et al : Effectiveness of Yoga for Hypertension: Systematic Review and Meta-Analysis. Evid Based Complement Alternat Med 2013;2013:649836.

※8 宮地元彦:たったこれだけで血管は強くなる.日本文芸社,56-57,2012. ※ 9 Komatsu M, Akazawa N, Tanahashi K, Kumagai H, Yoshikawa T, Kosaki K, Zempo-Miyaki A, Maeda S. Central blood pressure is associated with trunk flexibility in older adults. Artery Res. 19: 91-96, 2017.


監修:宮地 元彦 先生
早稲田大学スポーツ科学学術院教授

鹿屋体育大学スポーツ課程卒業後、川崎医療福祉大学助教授、米国コロラド大学客員研究員を経て、国立健康・栄養研究所健康増進研究部、身体活動調査研究室室長に着任。同部長などを経て早稲田大学スポーツ科学学術院教授に就任。厚生労働省健康日本21最終評価チーム構成員、運動基準・運動指針改定のための検討会、スポーツ庁運動・スポーツガイドライン策定検討会委員などを歴任。日本学術会議会員。