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動脈硬化は、日本人の死亡原因の2割以上を占める心疾患・脳血管疾患の原因となり、生命に重篤な影響を及ぼすことも。しかし自覚症状がないことが多く、日ごろの生活習慣の改善と早期発見・早期治療が大事になります。
今回、比較的動脈硬化のリスクが高いとされている中高年の父親世代を代表して元力士・タレントの舞の海秀平さん、その子ども世代の代表として俳優の岡田結実さんを迎え、循環器領域の第一人者である佐賀大学医学部長の野出孝一先生に、動脈硬化についての解説をいただきました。
日本人の死因のうち約22%が心筋梗塞、狭心症、脳血管疾患といった循環器病ですが、そのほとんどの原因が動脈硬化によるものです。健康な動脈はしなやかで弾力性がありますが、動脈硬化になると古いゴムホースのように弾力性が失われて、血管壁が厚くなります。動脈硬化が起こった臓器には血液が通りにくくなり、深刻な病気が生じやすくなってしまいます。
では、動脈硬化はどうやって起こるのでしょうか。高血圧や糖尿病の持病がある人、加齢や喫煙、肥満などの要因がある人は、血管壁が血圧の圧力を受けて、だんだん硬くなっていきます。さらに、その血管の内側に悪玉コレステロールがたまるとプラーク(こぶ)になり、放っておくとプラークの膜が破れ、その部位を修復しようとして血液中の血小板や赤血球が集まって血栓ができます。そうして血流が遮断されると、心筋梗塞や脳梗塞をはじめとする、さまざまな病気を引き起こしてしまうのです。
こうした深刻な合併症は、何の前ぶれもなく急に起こりやすいのが大きな特徴です。それまでは無症状だったのに、ある日突然倒れてしまうこともあります。
動脈硬化の予防法は、高血圧の人は血圧をしっかり下げる、糖尿病を治療する、肥満を改善する、禁煙する、食生活を見直してコレステロールを下げるといったことが大事です。なかでも高血圧は最も多い生活習慣病で、日本人では約4300万人、高齢者の半数以上が持つ病気です。上の血圧が140を超えると動脈硬化は将来必ず起きるといわれているため、該当する人は塩分を減らし、カリウムや食物繊維の多い食品をとるなどして、高血圧を抑えることが大切です。肥満の人は「体重(kg)÷〔身長(m)×身長(m)〕」で算出されるBMI(体格指数)が25を超えないように体重管理して、日々の適切な運動を心がけましょう。
動脈硬化を診断・評価する方法を2つ紹介します。まず1つは「頸動脈エコー」です。首の血管は体表に最も近いので、動脈硬化の診断もしやすいのです。通常、血管の壁の厚さは1mm以下。頸動脈エコーで血管の厚みが1.1mm以上ある場合は動脈硬化のリスクがあると判断します。
もう1つは、全身の血管を伝わる速さから動脈の硬さを測る「CAVI(Cardio Ankle Vascular Index)」という検査です。動脈が硬くなるとCAVIの数値が上がります。正常範囲は8未満ですが、9以上になると動脈硬化が疑われます。また、この検査では足の血管の詰まりも同時に測ることができます。
これらの定期的な検査を通じて自分の血管の状態を把握し、予防・治療することが大切です。
――改めて、動脈硬化とはどんな病気でしょうか?
野出先生 動脈硬化は血管が硬くなることと、血管の内膜にプラーク(こぶ)がたまって破れ、血栓ができることによって生じます。動脈硬化の原因には高血圧や糖尿病、高脂血症などがあるのですが、これらは生活習慣を改善すれば予防できます。普段の生活に気をつけて、さらに検査を通じて自分の血管の状態を自覚することが大事です。
岡田 動脈硬化という名前はもちろん知っていたんですけど、その影響で脳卒中や心筋梗塞などのこわい病気になることを野出先生のお話で知りました。私たち子ども世代もそうですが、親世代に「気をつけて!」と伝えたいですね。
野出先生 私は高校生の血圧検診もしているのですが、男女ともに数%、血圧が140を超えている生徒さんがいます。岡田さんはまったく問題ないと思いますが、若い人でも血圧が高いと今後10年、20年経って動脈硬化が起こる可能性があるので、将来のリスクとして今から高血圧や肥満、コレステロールに注意する必要があります。
舞の海 私は1年半前に野出先生にお会いしたときに、動脈硬化のこわさを教えていただいてとても勉強になりました。そのときに動脈硬化を調べるCAVIの検査を受けて、今日もさっき計測してもらったのですが……、今回の結果はどうでしたか?
野出先生 通常は、加齢によってCAVIの値が上がるのですが、舞の海さんは1年半前と今の値が変わっていません。血管の状態も硬さも正常で、さらに血圧も下がっていて、非常に良い結果でした。あのころよりも体重が減少されましたか?
舞の海 はい、5キロくらい減りました! 最近はお腹いっぱいまで食べないようにして、さらに1駅早く降りて歩くようにしていたら、体重が減って血圧も下がりました。
岡田 すごいですね! 私はどっちもやってしまっているので、10年、20年後の自分を考えて行動に移していきたいです。うちの父(お笑いコンビ・ますだおかだの岡田圭右さん)はきっと検査がこわいと思うんですけど、舞の海さんが受けたCAVIの検査は圧迫感もないしすぐに終わると聞いたので、「大丈夫だよ」って教えてあげたいなと思いました。
野出先生 CAVIは約5分で簡単にできる検査で痛みもなく、横たわって上腕と下肢の血圧を測ることで、全身の血管の状態を見ることができます。ぜひ定期的に検査して自分の血管年齢を知り、健康への意識を高めていただきたいですね。
――普段の生活で、どんな点に気をつければよいのでしょうか。
野出先生 シンプルですが運動と食事、睡眠です。たっぷり睡眠をとって規則正しい生活をして、ウォーキングや散歩など楽しく毎日運動しながら過ごしていただきたいです。 ――ここで、舞の海さんにご自身の生活習慣を振り返って動脈硬化のリスクチェックをしていただきます。11個の質問に、○か×かで答えてみてください。
舞の海 1年半前にも同じ質問に回答したのですが、8個と多かったんです。今回は生活習慣を改善したこともあって5個に減りました。食事はいつも腹八分目で、野菜やキノコ類を最初に食べるようにしてます。ご飯も茶碗1杯くらいで、現役時代と比べたら10分の1の量ですね。あと、昼食を食べた後には20~30分は歩くようにしています。
野出先生 すばらしいですね。食後に歩くと糖やコレステロールの代謝が非常に良くなり、糖尿病にも動脈硬化にもなりにくくなるのでおすすめです。
岡田 ここで実は、今日は父の日イベントということで、私から舞の海さんに動脈硬化予防に良い「愛娘弁当」をご用意しました。塩分を使いすぎず、おだしで味つけして、血糖値の急上昇を抑えるために豆入りの雑穀米にしました。
舞の海 これはおいしそう! さっそくいただきます。うん、薄味だけどだしがしっかりきいていて、本当においしいです。
野出先生 緑黄色野菜でカリウムもしっかりとれて、血圧にも良いお弁当ですね。れんこんやきのこ類の食物繊維は、糖やコレステロールの吸収を抑えてくれる効果があります。毎日の食生活は生活習慣病や動脈硬化に深く関連しているので、ぜひ家族で協力し合いながら、楽しく家族ぐるみで予防していただきたいですね。
舞の海 私は50代なのですが、日ごろどんな生活をしているかの積み重ねで、いろいろな病気が現れてくると感じています。歳をとっても元気に動き回れる体づくりをするためにも、生活習慣に気をつけて、検査もしながら健康への意識を高めていきたいです。
岡田 親が長生きするのって、子どもにとっては涙が出るほどうれしいことです。病気の早期発見や予防はとても大切なメッセージなので、私も家族や周りの人たちにこうした情報を伝えていきたいと思いました。今日はありがとうございました!